「街の電波」は測位を補完できるか ―ネットワーク測位実験結果―
平素より小型船舶位置共有システム「boatmark®」へのデータ共有と、日々の安全運航へのご協力いただきありがとうございます。
以前、本ブログにてお知らせいたしました、高速道路や高層ビル群に囲まれた難所で衛星信号(GNSS)を補完するネットワーク測位(Wi-Fi/Bluetooth/携帯基地局)を活用したフェイルオーバー実験につきまして、先行対応端末による定量的な実証データがまとまりましたのでご報告いたします。
1. エリア別の実測成果:道頓堀川で大きな改善効果を実証
全体の実績として、測位欠測率を約1割(+10.1%)改善(44.7% → 40.2%)いたしましたが、エリアによってその効果には明確な特徴が現れました。
※欠損率とは、GPS(GNSS)の電波受信できない、もしくは電波反射の乱れ(マルチパス)によって位置を特定できる精度に満たなかった測位動作の割合を指します。
道頓堀川(ビル群・マルチパスエリア)
- GPS単独での欠測率35.5%に対し、ネットワーク併用により27.6%へ改善(相対改善率 +22.2%)。
- 空は開けているもののビル壁面での電波反射(マルチパス)が激しい道頓堀川において、「街の電波」による補完が非常に有効に機能することが実証されました。
東横堀川(高速道路による上空遮蔽)
- GPS単独での欠測率64.8%に対し、実績は60.6%(相対改善率 +6.4%)。
- トリガー設定や運用のチューニングを最適化することで、理論上は最大+33.3%まで改善できる余地があることも浮き彫りとなりました。
2. 今回の実験から見えた「収穫」と今後の展望
今回の実証実験を通じて、私たちは以下の重要な知見を得ることができました。
- 実利の明確化
ネットワーク併用の主な実利は「特定難所(道頓堀川等)での補完」および「停泊・係留時の位置監視の精度向上」に効くという役割が整理できました。 - 改善のポテンシャル
端末の起動精度やトリガーの調整(チューニング)を詰めることで、全体として理論上最大3〜4割程度(+36.0%)まで欠測率を下げられる改善余地があることが判明しました。 - 技術限界の把握
ネットワーク測位の仕様上(数秒単位の高頻度測位は不可)、欠測率を完全にゼロにすることはできませんし、その精度もかなり低いものです。過度な過信を避けつつ、実用的な「死角の補完手段」として最適化を進めてまいります。
※本データは先行導入した一部端末の実績値に基づくものであり、今後の端末展開や仕様として精度を約束できるものではありません。
開発初期の頃には、ネットワーク測位のあまりの精度の低さに、採用を諦めた経緯がありましたが、システムを運用していく中で、実証データの蓄積により低精度な測位を補正する手段を得たこと、また、船舶の位置の正しさよりも他船が存在する可能性を漏らさず示すことを重要性から、予備の測位手段としてのネットワーク測位が有用であると判断しています。
対応端末への順次入れ替えについて
boatmark®では、今後も過酷な都市河川環境において「見落としのない、安心できる見守り」を実現するため、実証データを元にしたアルゴリズムと設定のアップデートを継続してまいります。
特に、今回顕著な改善効果が実証された道頓堀川、および今後のチューニングによる改善が見込まれる東横堀川を頻繁に通航される船舶を優先し、対応端末への入れ替えをご案内可能です。
「自社の運航ルートでの効果を確認したい」「端末交換について相談したい」という事業者様は、お気軽に事務局までお問い合わせください。
今後とも、現場の皆様の安心と安全を支える「boatmark®」をどうぞよろしくお願い申し上げます。